たばこ税の改革: 健康と開発 の交差点 多部門の視点 エグゼクティブ・サマリー 作成者: Patricio V. Marquez および Blanca Moreno-Dodson 率いるチーム TOBACCO USE たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 NOT ONLY KILLS MILLIONS OF PEOPLE EACH YEAR BUT PLACES A STAGGERING POVERTY AND ECONOMIC BURDEN ON LOW INCOME FAMILIE 2 // エグゼクティブ・サマリー 謝辞 (リード公衆衛生専門家) 本文書は Patricio V. Marquez (リー および Blanca Moreno-Dodson ドエコノミスト)、共同コーディネーター、世界銀行グループグローバルたばこ規制プログラ ムの下で、Alexander Irwin が編集して作成された技術報告書の主な調査結果を要約したも のです。技術報告書の全文は以下のに国際チームにより執筆されました(完全報告書の章 立て順)。 (保健 第 1 章  :Patricio V. Marquez ・栄養・人口グローバルプラクティス、世界銀行グループ) 第 2 章  :  Prabhat Jha(グローバル保健研究センター、聖ミカエル病院およびダラ・ラナ・ S スクール・ トロント大学、 オブパブリックヘルス、 カナダ)および Richard Peto(臨 トロント、 床試験サービスユニットおよび疫学調査ユニット、ナフィールド公衆衛生部門、リチャード・ ドール・ビルディング、オックスフォード大学、オックスフォード、英国) 第 3 章  : ガバナンスグローバルプラクティ (グローバル税チーム、  Blanca Moreno-Dodson ス、世界銀行グループ) 、Anne-Marie Perucic( 世 界 保 健 機 関 ) 第 4 章:Mark Goodchild( 世 界 保 健 機 関 ) 、 Rose Zheng(対外経済貿易大学、北京、中国)、Evan Blecher(世界保健機関)、およ び Jeremias Paul(世界保健機関) 第 5 章:Annerie Bouw(欧州委員会) 第 6 章  :  Rouselle F. Lavado(世界銀行グループ、現在はアジア開発銀行)、Moritz Meyer 、Iryna Postolovska(世 (貧困・エクイティグローバルプラクティス、世界銀行グループ) 界銀行グループ)、および Renzo Efren Sotomayor(世界銀行グループ) 第 7 章:Hana Ross(南アフリカ、ケープタウン大学) 第 8 章:Teh-Wei Hu(公衆衛生機関の国際たばこ規制センター、オークランド、カリフォ ルニア)、Angela Lisulo(コンサルタント、世界銀行グループ)、および Melissa Brown(農 業グローバルプラクティス、世界銀行グループ) 第 9 章:Enrique Fanta(通商・競争力グローバルプラクティス、世界銀行)グループ) および Magaly Garcia(世界銀行グループ) W- ES 3 たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 本報告書のすべての部分の草案が作成された時点で、Paul Isenman(元世界銀行グループ ディレクター兼リードエコノミスト)が審査し、コメントすることで、広範な技術的な意見と 提案をもたらし、本書の堅牢性と品質を高めています。追加コメントおよび技術的な意見が Alan Fuchs(世界銀行グループ)、Francisco Meneses(米国、デューク大学およびチリ、ア ドルフォ・イバニェス大学)、および Alberto Gonima(コンサルタント、世界銀行グループ) により添えられています。元国際通貨基金 (IMF) 財政局ディレクターである Vito Tanzi はコメ ントを提供し、本報告書の異なる章立ての当初のバージョンを指導しました。 Sheila Dutta(世界銀行グループ)は結論の章に貢献し、本報告書の主要メッセージをま とめています。 Enis Baris(プログラムマネージャー、保健・栄養・人口グローバルプラクティス、世界銀行 グループ)、および Tim Evans(シニアディレクター、保健・栄養・人口グローバルプラクティ ス、世界銀行グループ)、James Brumby(ディレクター、ガバナンスグローバルプラクティス、 世界銀行グループ)、Alma Kanani(プログラムマネージャー、ガバナンスグローバルプラク ティス)、および Marijn Verhoeven(リードエコノミスト、およびグローバル税チームのクラ スターリード、ガバナンスグローバルプラクティス、世界銀行グループ)が全体的な技術的 指導と監修を行っています。 Akosua Dakwa(世界銀行グループ)は事務管理サポートを提供しています。 本報告書の作成は世界銀行グローバルたばこ規制プログラムの下で実施され、ビル&メリ ンダ・ゲイツ財団およびブルームバーグ財団の後援を得ています。 執筆者は本報告書で表明されている見解に個人的に責任を負うものであり、必ずしも、関連 している諸機関の見解、決定、または方針を代表するものではありません。 ワシントン D.C. 2017 年 9 月 26 日 カバー写真(左から時計回り): レバノン、ベイルートの街の風景。Dominic Chavez/World Bank 撮影。Simone D. McCourtie/World Bank 撮影による旗。北ベトナムの棚田。Tran Thi 撮影。Hoa/World Bank。パレードに参加して いる生徒。南アフリカ。Trevor Samson/World Bank 撮影。 4 // エグゼクティブ・サマリー エグゼクティブ・サマリー 同時に何百という人々の命を救い、貧困を削減し、国の発展のための国内融資リソースを 増大することのできる政策があります。 この政策は、たばこの値ごろ感を下げ、また証拠に示されるように、消費を削減するために たばこ消費税率を引き上げることから成り立っています。 今日、この強力で人道的な開発とかつ貧困削減の方策は、特に低中所得国 (LMICs) におい て、ほとんど十分に活用されていません。本報告書はたばこ税改革に関して政策立案者によ る決定を支援し、また生命を守り、政府収入を増大させるためにたばこ消費税を利用する ための分析ツールおよび経験的ツールを提供するものです。本報告書は、より高いたばこ 税に関する公衆衛生、経済、貧困絶滅のケースを規定するものです。そこでは、一部の国 がいかにして野心的な改革をすでに成し遂げているかを紹介し、また測定可能な結果を文 書化しています。本書では、タバコ税改革を今実施することで、政策立案者は、より健康で、 より繁栄する社会を実現するための近道を選択できることが示されています。 喫煙の課題 今日では、喫煙が体に悪いことを疑う人はほとんどいません。しかし、多くの人が、見識あ る政策立案者を含め、それがいかに悪いものであるということを認識していません。人々に とって良くないものは、経済にとっても良くなく、また貧困削減にも良くありません。事実、 喫煙は毎年何百万もの人を死に追い込んでいるだけでなく、低所得の家族および開発途上 国に驚くほどの貧困と経済的負担を与えており、国家間また各国内の不平等の溝を深めてい ます。 健康被害 たばこは長期的な喫煙者の少なくとも半数を死に追いやっており、エイズ、結核、マラ リアなどを合わせたよりも多くの死亡者を毎年出しています。そして、たばこに起因す る疾病および死亡の負担はますます重くなっています。20 世紀には、たばこに起因する 死亡者数は約 1 億人でした。現在のパターンがそのまま続けば、たばこにより今世紀に 10 億もの人々が亡くなります。そして、その大半が低中所得国におけるものです(Jha 2009; Peto and Lopez, 2001)。保健システムはこうした人々と共に苦難を背負います。喫 煙により引き起こされた、または悪化した数知れない慢性疾病の治療は、各国の年間医 療費を膨大なものとし、その他の健康上の問題解決または開発上の優先事項への取り組 みに使用することのできるはずのリソースを転用することになります。 5 たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 図 ES1: 国の所得分類別による成人男性の喫煙率および福祉分布の五分位数 40 38 37 35 33 35 (15〜49歳の男性人口の%) 31 30 32 30 30 30 28 25 23 20 18 19 15 15 13 喫煙率 10 所得 低所得国 5 低中所得国 高中所得国 0 Q1 (貧困) Q2 Q3 Q4 Q5 (裕福) データ資料:Demographic and Health Surveys (DHS) 2007 年以降最新の年、世界銀行所得分類。 経済的損害 タバコ関連の死亡は予防可能な悲劇であるだけでなく、経済的にも重大なコストを招きます。 世界中における喫煙による経済的損害の合計額(死亡や障害による生産性の損失を含む) は年間 1 兆 3000 億米ドル以上になると推定されています。これは世界の年間国内総生産 (GDP) の 1.8% に相当します (Goodchild, Nargis, and Tursan d’ Espaignet 2017)。 悪化する貧困 この経済的負担は、経済的余裕が最もない人や国に主に重くのしかかっています。世界の 喫煙者の 80% 以上が低中所得国で暮らしています。そうした国の中でも、たばこ中毒は特 に低所得者および低教育者の間に集中しています(図 ES1)。貧しい喫煙者は裕福な喫煙者 よりも、その所得のより大きな部分をタバコ製品に費やしており、また貧困者は喫煙関係の 疾病を最も多く被っています。こうした疾病関連の医療費や所得損失は何百万世帯を財務上 の危機に陥らせ、貧困は年を追うごとに深まります。一方、喫煙は、特に若者の間で、将 来の潜在的収益力を低下させ、成人労働者の経済的生産性を低下させます。 6 // エグゼクティブ・サマリー 必須のたばこ税 高所得国間には非常な相違が見られ、たばこによる死亡率を低下させるため、価格ツール および非価格ツールがますます使用されるようになっています。一方低中所得国ではタバコ による死亡者の絶対数は引き続き増加しています。富める喫煙者と貧しい喫煙者の間にある 死亡率の違いの約半分が喫煙によるものです。全世界の国家間の機会均等のためにも、た ばこに対する措置が強く求められています。 国際連合の持続可能な開発目標 (SDGs) を採択することで、すべての国が 2030 年までに癌、 脳卒中、心臓病などの非伝染性疾病による死亡率の 30% 削減を達成することに責任を持っ て取り組んでいます。この目標達成のためには、喫煙削減は各国にとって極めて重要なもの となっています (Jha, Marquez, and Dutta 2017)。いかにして低中所得国は必要な規模で喫煙 率を削減し、高所得国が達成するより早く前に進むことができるのでしょうか?大胆なたばこ 消費税率の引き上げは、群を抜いて最も強力なツールです。 タバコ消費税率を引き上げるリーダーは以下を期待できます。 人々の寿命の伸びとより良い健康:たばこ消費税率引き上げを実施する主な理由は、それが 人々の命を救い、癌や心臓病などの深刻な病気を減らすためです。様々な国で見られたの は、たばこの価格を 50% 引き上げると、通常たばこ消費は 20% 削減されるということです。 消費が低下することにより、数年内には、その後のタバコ関連の疾病や死亡に大きな影響 がでます。こうした効果の半分は、現在の喫煙者が禁煙することによるものです。たばこ価 格が高くなることで、若者の間で喫煙を始めようとする者が少なくなり、その結果、最初か らタバコ中毒になるのを防ぐことができます (IARC 2011)。 図 ES2: 喫煙、男性の肺がん、たばこ価格:フランス 1980 年~ 2010 年 6.0 たばこの数/成人/日 5.5 300 5.0 肺がん死亡率10万人あたり (4で割った); 男性 35-44歳 250 価格 (1980年に比べて %) 4.5 死亡率 4.0 人数/成人/日, 200 3.5 3.0 150 2.5 相対価格 2.0 100 1.5 1.0 50 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 資料:Jha (2012)。10 万人当たりの肺がん死亡率を 4 で割ることで、1 日当たりの喫煙量と同じ尺度になるようにします。 7 たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 開発のためのさらなるリソース: 喫煙が低下し、人々の健康が向上した場合でも、高い たばこ税は政府の税収を大幅に増大することができます。本報告書のために実施された経 済モデルでは、すべての開発途上国においてたばこ消費税率を 1 箱当たり 0.25 米ドル相当 引き上げた場合、低中所得国におけるたばこ消費による政府収入は 410 億米ドルになるこ とが示されています。つまり、こうした国々のたばこ消費税による税収は 2014 年レベルか ら 29% 増加することになります。この追加収入により開発投資の資金を賄うことができます (Goodchild, Perucic, and Nargis 2016 も参照のこと) 一部の国における早期の勝利 たばこ税、公共衛生、政府収入の間の繋がりは単に理論的なものではありません。2012 年 から 2014 年の間に、100 を超える各国政府が命を救い、政府収入を増大するため、たば こ税の引き上げを実施しました。大半の場合、こうした税の引き上げは、たばこ消費を大幅 に減らすには小幅すぎます。しかし、本報告書に記載されているように、一部の国ではより 大胆な方策を講じることで、大幅な公衆衛生の向上と財務収益のメリットを生み出していま す。このことはまた、より多くのことを成し遂げることができることを示しています。2015 年 現在、WHO の報告によれば、の低中所得国のわずか 28 ヶ国のみが、小売カウンターでの たばこ広告規制や、公共の場での喫煙規制、適切な高い消費税率などの総合的なたばこ規 制政策を設けているとのことです。さらに多くの国々のリーダーが、たばこ税による公共衛 生と経済的論議を重視していることから、今こそ、並外れた前進を遂げる機会であるといえ ます。 実現させる リーダーがたばこ消費税を押し進める場合に、極めて重要な手順とはどういうものでしょう か?避けなくてはならない、よくある落とし穴とはどういうものでしょうか?本報告書ではたば こ税実施の成功例と意思決定プロセスに関する大量の証拠がとりまとめられています。主な 教訓には以下が挙げられます。 •  大胆に、素早く。 税金戦略は、健康上の利益にまず焦点を当て、その後財政上の利 益に注目するべきです。このことは大規模なたばこ消費税率の引き上げをプロセス の早い段階で開始することを意味します。ゆっくりとした、慎重な時間をかけた採 用は、堅実であるかのように思えます。しかし、そのことは、避けることの可能な 疾病や早死を多くの人々に強制することを意味します。たばこ税制では、大胆な行 動を取った者がその見返りを得ることができるのです。 • 値ごろ感を崩すたばこ税では、 たばこの値ごろ感を低下させる事ができる限りにお  いて、たばこ消費を減らすことができます。ほとんどの低中所得国では、賃金が上 昇しています。このため、たばこ税をさらに早い速度で引き上げない限り、たばこ は消費者にとって事実上より買い求めやすいものとなってます。効果的な戦略は、 8 // エグゼクティブ・サマリー 一般的に最初に大きな税の引き上げを行い、さらに長期的に繰り返し引き上げるこ とで、たばこ価格の上昇率が 1 人当たりの実質所得の伸び(インフレーションを含 む)より高くなるように保つというものです。 •  期待を塗り替える。一般大衆とのコミュニケーションもまた非常に重要です。政府は、 消費者に税率の引き上げは単に一回限りのものではなく、たばこの価格は上昇し続 けるということを知らせる必要があります。このことは、現在の喫煙者が喫煙を止 める動機付けとなり、また若者がたばこに手を出さないようになります。 • 数量による税。 たばこ税率は簡素化し、たばこの数量に基づいたもので、価格に基  づかないようにします。このことは 2 つの方法で実行します。どちらも喫煙者が 税率が引き上げられた後に、それまで吸っていたブランドから、より安いブランド へと切り替えるのを防ぐことになります(この対応は「下位代替」と呼ばれます)、 最初の主な動きは、価値ベースの消費税またはその他の税に対して、特定の消費税 を使用することです。考慮する必要のある主な要素は、特定税率は長期的には調整 する必要があり、少なくともインフレ率と歩調を合わせ、できれば、それより早く 上昇させることで長期的な値ごろ感をなくすRことにあります。このため、戦略を 採用する際には、長期的に毎年増加を見込んだ枠組 / 手段を伴う必要があります(例 えば英国のたばこ税エスカレーターなど)。二番目は、大半の発展途上国で採用さ れている複数のたばこ税の「階層」を融合することです。こうすることで、たばこ 税の引き上げにより、すべてのブランドにおいて一度に同じ額の大きな値上げがな されることになり、切り替えずに、完全に喫煙を止める方向で喫煙者を押すことが できます。 • 「金額未定」  により支援を勝ち取ることができる。法律制定による税収入の割り当ては、 財政専門家により、柔軟性を欠き、細分化をもたらし、最終的に公共支出を歪める ものであるとの批判を浴びています。しかしながら、資金の「金額未定」の割り当 て、例えば、増税分を医療関連の支出増に結びつける、といったことは、税の引き 上げに対する草の根的な支援を生み出すのに役立ちます。このことは他の部門にお ける過去の経験でも示されており、オーストラリア、フィリピン、米国などの国々 におけるたばこ税においても効果を発揮しています。 •  地域の協力により結果をさらに向上させることができる。地域の中で国々が共に協力す ることで、野心的なたばこ税の改革の機運をさらに盛り上げ、たばこの密輸などの 越境の脅威を最小化することができます。欧州連合 (EU) はその例を示してくれま す。EU の経験は、地域の協力により、たばこ消費の削減と同時に政府収入の増大 させるという二つの目標を各国が達成できるようになることを示しています。また 改革のペースも教訓の一つです。EU の立法者はすべての加盟国に当初低い最低限 のたばこ消費税を設定することで「ゆっくり進める」ようにという政治的圧力に早 い段階で直面しました。しかし、EU は加盟国に比較的高い率の最低たばこ消費税 に前もって合意するよう納得させることで、進捗を加速化しました。一部の特別な 問題を抱える国ではより長期の移行期間が許可されました。 9 たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 • 幅広い連合を構築する。 各国のリーダーは、税率引き上げとその他のたばこ規制方  策に対してたばこ業界からの強い抵抗に直面します。同業界は、財政上大きな影響 力を持っており、政治上も巧妙です。たばこ業界は政府に最も効率の悪い介入策を 奨励し、特に税方策を骨抜きにし、弱体化させようとします。こうした圧力に抵抗 するには、堅牢な科学的かつ経済的な分析、また他分野にまたがる政策策定が必要 になります。それにはまた市民社会とオピニオン・リーダーの動員も必要になりま す。国際的パートナーからの支援も必要となります。特に低所得国においては政府 のあらゆる部門の準備および調整をするために国力を高揚すると同時に政府外の幅 広い利害関係者の参加を求めていく必要があります。 主要方針に伴う困難な問題 各国がたばこ税率引き上げを計画・実施する際には、特定の分野での問題を予想しておく べきです。いくつかの問題は重要なものです。それらは本質的なものであり、またたばこ業 界は、それらをうまく使って大衆の意見や政策討論などに影響を及ぼすようとします。そう した問題の中でも特に際立っているのが次の 3 つの問題です。(1) 高いたばこ税率は貧しい 人々にどのような影響を与えるか、(2) たばこ税は雇用にどのような影響を及ぼすか、(3) た ばこ税率の引き上げと違法なたばこ取引との関係。 たばことエクイティ:貧しい人々を中心に据える 上述のように、世界中から集められた証拠は、たばこ税がいかに貧困を削減するかを示し ています。それでいながら、業界のたばこ税引き上げに反対する最も狡猾な議論では、こう した税の引き上げが貧しい人々に特に苦しめるとしています。この議論はたばこ税は逆累進 のものであるという主張に基づくものです。すなわち、それらは富裕者よりも貧困者から可 処分所得の多くを取り上げることになるというものです。ほぼ定義上では、貧しい喫煙者は 裕福な喫煙者よりもたばこに所得のより多くの部分を一般的に費やします。しかし、貧しい 喫煙者は裕福な喫煙者よりも価格の単位変化により敏感に反応します。このため税引き上げ は裕福な人よりも貧しい人の間でのたばこの値ごろ感をより効果的に引き下げることになり ます。たばこの値ごろ感を低下させることは貧しい喫煙者を苦しませることにはなりません。 それどころか、それにより他の商品やサービスに費やす可処分所得が増大し、しかも、多く の人々の生命を救うことができます。 たばこ税率の引き上げに直面した比較的貧しい世帯は、富裕世帯よりも相対的にその行動 を調整します。50% タバコの価格が上昇することで貧困層のたばこ消費は 30~50% 低下し ます。これは富裕層の間での低下率よりはるかに大きくなっています。このことは、貧しい人々 は税率引き上げ後に禁煙することから、健康上および経済上最大のメリットを受けることに なることを意味します。例えば、タイの実例を見てみると、貧困者はたばこ税増大のわずか 10 // エグゼクティブ・サマリー 6% を支払うことで、健康上のメリットの 58% を得ることができたことが明らかになっていま す (Jha, Joseph, Moser, et al.2012)。 禁煙することで貧困者が得る健康上のメリットは、長期的な経済上の利得にもつながるもの です。喫煙者がいる世帯は、喫煙者がいない同様の世帯に比較し長期的に収入が少なくなっ ています。福祉スケールの低い方にある人々の間で禁煙が進むことで、たばこ税の引き上 げにより、富裕者に比べ貧困者の間での所得が増大し、エクイティは直接的に増大します。 最終結論は以下の通りです。すべての事実を検討したとき、たばこ税は逆累進ではなく、非 こうした対策による健康面および経済面の全体でのメリッ 常に累進的なものです。なぜなら、 トは、その相対的コストをはるかに上回るからです。 たばこ税と雇用:より良い生活のための橋渡し たばこ業界は、たばこ税の引き上げに反対する議論として農業、製造業、流通における職 が失われる可能性があると警告します。しかし、各国政府はたばこ税率の引き上げにより影 響を受ける職に就いている、比較的少数の弱い立場にある労働者の調整を促進することが できます。 たばこ税と雇用に関しては、以下の点は注意を向ける価値があります。 • 世界中のたばこ関連の職の喪失は大半は製造業者自身の方針によるもので、税の引き 上げによるものではありません。 分析によると、観察されるたばこ関連の雇用の減少 は主に自動化と業界自体の統合によるものであることが明らかになっています (NCI および WHO 2016)。 • 今日、低中所得国における職でたばこに完全に依存している職はほとんどありません。 より大規模な生産者を持つ国々についても同じことが言えます。ごくわずかな例外を除 き、たばこ関連の雇用が全体に占める割合はすでに非常に小さくなっています。た ばこ製品の世界最大の生産者であり、また消費者でもある中国においても、たばこ を生育する経営者はほんの約 2% にすぎません (Hu, Mao, Shi et al.2008)。 • た  ばこ税引き上げに続き、消費者の支出は非たばこ部門に移行し、代替となる職が創 出されます。 税率引き上げ後にたばこ消費が低下すると、たばこ製品に費やされて いた資金はほぼ別の経済部門に流れることになり、生産を刺激し、そこでの職の創 出となり、同時に経済の多角化にも寄与することになります。調査によると、長期 的にはたばこ消費税率を引き上げたほぼすべての国において雇用の喪失というより も、正味利益が得られる可能性が大きいことが示されています(IARC 2011; NCI お よび WHO 2016)。 11 たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 • た  ばこ税の計画においては、いずれにせよ影響を受ける労働者、特にスキルの低い労 働者への支援を組み入れる必要があります。数は少ないとはいえ、たばこへの需要が 減る中、スキルを欠くたばこ労働者の中には職と収入を失うものも出てきます。政 府はこの問題をあらかじめ予測し、解決策を準備する必要があります。移行を成功 裏に行うことは、労働者のたばこ業界外での、これまでと同じまたはより良い生活 へのアクセスを支援することで実現可能です。政策立案者はこの問題を正面から取 り組まなくてはなりません。公平さということでは、弱い立場にある労働者と家族 を支援すること、戦略的理由としては、たばこ業界が税率引き上げに対する政治的 武器として雇用を理由にすることを防ぐことです。 たばこ農業経営者が他の穀物に切り替えるのを支援 主にたばこに頼る生産者がいるごく少数の国では、タバコ業界での職の重要な部分は農業 におおけるものです。政府とその提携者は、たばこ農業経営者が他の穀物に移行するのを 奨励・支援するプログラムによりたばこ税率引き上げを調整することができます。ほぼあら ゆる環境において、農業経営者にとってたばこより利益の上がる代替穀物というのは存在し ており、しかもたばこ農場経営における健康リスクもありません。例えば、たばこ植物との 接触を通じてニコチンにさらされることによる体系的な被毒であるグリーン・たばこ病など が挙げられます。 今日、生活のためにたばこのみ頼っている農場経営者の割合はごくわずかです。ほとんどの 場合、たばこは複数穀物制度の一部になっており、需要が減る場合には、農業経営者は多 角化することでたばこへの依存度を低くしています。たばこ生育は世界的な経済貢献要因と しては小さく、縮小しつつあります。しかしながら、目標をもった支援、例えばインプットク レジット、農業拡大、灌漑などが、一部の小規模たばこ農業経営者、特にたばこ業界への 依存に囚われの身となっている者に対しては必要となるでしょう。業界プラクティスはそのよ うな依存性を促進しています。例えば、農業経営者に無料の情報とたばこ穀物全体の買い 付け保証などを提供するなどがありますが、そのような低レートでは農場経営主は採算がと れないことがよくあり、結局は企業に対する慢性的な負債を抱えることになります (Kagaruki 2010)。 たばこの不正取引の抑制 たばこ産業は、たばこ税の引き上げは、たばこの不正取引の急増につながり、一方でたば こ税を引き下げることでそのような犯罪活動を減少させることになると政策立案者に助言し ています。本論点に関して政府に対する一番大切なメッセージは、かなりの規模の密輸が 行われている中においてさえ、タバコ税率の引き上げにより、たばこの消費は減少し、財源 は増大するということです。3000 マイルもの検問所のない国境を米国と共有しているカナダ 12 // エグゼクティブ・サマリー では、たばこ産業が犯罪ネットワークと結託した時にのみ、大規模な密輸が起こるという証 拠が示されています (Kelton and Givel 2008)。たばこの不正取引を牽引する主な原因は、 高い税率ではなく、取り締まりの緩さと組織化された犯罪ネットワークにあります。政府に とって中核となる戦略は、犯罪を取り締まり、税務を改善し、規制措置を強制することであり、 たばこ税を引き下げることではありません。例えば、トルコでは、脱税を取り締まると同時 に増税することで、密売を大幅に減少させました。 たばこの不正取引は抑制するための、実証済みの強固な規制および強制措置というのは存 在します。富裕国はもちろん、低中所得国においても、こうした措置が取られ、成功を収め ています。たばこ製品の不法取引を廃絶するための WHO 議定書において、その多くが取り 上げられています。効果的なツールには、サプライチェーンを通じてたばこ製品を追跡する トラック・アンド・トレースシステム、税関での検知機器、より厳しい制裁などがあります。 今日、国際社会が各国の国会議員に、拘束力を有する国際法にするために、WHO 議定書 に批准、施行するよう推奨し、奨励することは必須といえます (Marquez 2015)。広範囲に わたる規則や強制プログラムを採用している多くの国では、目覚ましい結果を出しています。 例えば、2000 年に英国で「たばこ密輸問題への取組み」戦略が導入されて以来、不法た ばこ市場の規模は約半分に減り、国内販売の約 9% までになり、200 億本以上のたばこと 2,700 トン以上の手巻きたばこが押収されました(図 ES3)。さらに、英国では警察官の協 力により、たばこに関する犯罪で 3,300 件以上の刑事訴追が行われています。チリは、税 率がたばこ 1 箱の価格の 78% という世界でも最もたばこの税率が高い国の一つですが、チ 。これは、 リ政府もまた、たばこ密輸製品の押収件数が増加するという成功を収めています。 国内のたばこ供給に影響を及ぼし、2013 年にたばこ価格が値上げされた後にやや増加して いた不法取引を削減するのに役立っています。 今後の道程 21 世紀も 20 年をほぼ終え、次の 10 年に突入しようとしている今、禁煙社会を実現するこ とは、持続可能な開発において重要な指標といえます。今日、たばこ税を促進させるため には、以下の分野に力を入れて取り組む必要があります。 各国への需要主導型の技術支援。効果的な技術支援を行うためには、優れた慣行の経験を 共有し、多国間および二国間組織、市民社会と共に、財務省、保健省の政府高官を関与さ せていく必要があります。より良く体系化された、より高率のたばこ税は、より広範な税制お よび財政改革においてますます不可欠な既定部分となるべきです。 13 たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 能力開発と知識の共有。タバコ税の引き上げに成功した国は、貴重な経験を積んでおり、 実績とすぐれた慣行を他の国と共有することができます。国際社会はまた、さらなる能力開 発のための国レベルの要望に応える準備を整える必要があります。これには、異なる税金レ ベルと体系での財政的および健康上の意味合いを評価できるシミュレーションモデルの使用 に関する能力構築も含まれます。 グローバルエビデンスのさらなる強化。国同士の知識交換の促進に加え、たばこへの課税 に関するグローバルエビデンスにおいては、以下の分野において入念に強化される必要が あります。 • 累進性、雇用、貧困:最新のエビデンスは、貧困層はより価格反応性が高いために  富裕層より多くの健康上の利益を得られることから、たばこ税は純額で累進性が高 いことを示していますこのシナリオを完成させるために、たばこ税が貧困、健康、 雇用に及ぼす影響に関する各国ごとの例がさらに必要となります。 •  り優れた経済サーベイランス:業界慣行のより優れた追跡に加え、たばこ価格、密 よ 売、たばこ製品への需要に関して素早くアクセスできるデータを作成するための国 際的取り組みの必要性があります。これらのデータには価格以外の戦略に対する反 応、特に、たばこ禁止を覆えようとする業界の取り組み、たばこの宣伝、財務省へ のロビー活動などに関する、はるかに強力な情報基盤が含まれます。 • 密売:税関および関連手段を通じて、たばこの密売を減少させる各国の制度面での  能力を強化するための調査と技術支援が必要とされます。これは、公共部門の近代 化への取り組みに組み込まれるべきものです。 国全体で、世界全体で、政策変更を推し進める。本報告書には、国策のエントリーポイン トが特定されており、かつ地域での連携により、結果をさらに強固なものにすることが できることが示されています。また国際条約は、さらなる変化を生み出す効果をもって います。そのような条約の一つに、たばこ規制に関する WHO 枠組条約の補足条約であ る、WHO のたばこ製品の不法取引を廃絶するための議定書があります。本議定書を拘束 力のある国際法にするには、40 か国の批准が必要とされますが、その数にはまだ到達し ていません。国際社会が政界全体やあらゆる国々の議員に、本議定書に批准、施行する よう推奨していくことが必須です。人々の生命そして社会福祉が、これにかかっています。 これは、国際協力がいかに各国の政策行動を支援できるかの一例にすぎず、公益のため にグローバルな政策手段を有効なものにできるかどうかは、国家レベルの選択(例、条 約批准)に委ねられています。国ごとの、そしてグローバルな政策行動が互いを強化する。 14 // エグゼクティブ・サマリー まとめ:グローバルな連合の拡充 より高いたばこ税率は、何百万もの人々の命を救い、貧困を減少し、開発投資のための公 的資金を増大させます。それにもかかわらず現在、たばこ規制措置としてのたばこ税は世界 でほとんど利用されていません。 しかし、この状況を変えるための力は存在しています。それはただ一人のリーダーや、一つ の機関の手中にあるのではなく、政府、多国間企業、市民社会、研究者、民間部門、そし てコミュニティが団結したグローバルな連合の手中にあります。人の命を救うたばこ税制改 革を、最速で、できる限り多くの人々に届くよう尽力する連合です。 2015 年以来、世界銀行、WHO、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ブルームバーグ財団などは、 たばこ税制改革のためにグローバルな連合を強化しようとして数々の国々と協力し合ってき ました。 「たばこ税 2017 年 4 月会議、 :公衆衛生および国内資源動員の両方に有利」において、 進捗状況を評価する機会を提供。世界銀行の本部であるワシントン DC にて開催された、こ のたばこ税務政策サミットには、35 か国の保健省および財務省からの高官代表団が集まり、 進捗状況を報告し、改革の促進にさらに取り組むことを確約しました。参加者は、各国が国 内のリソース動員に沿って開発資金計画を見直す中で、たばこ税のケースがますます意義を 深めていると述べています。 今後の長い道のりを考えれば、これらはまだほんの初めの段階にすぎません。躊躇している 国に比べ、大胆な行動を起こした国は、まだごく少数です。世界銀行は今後、財務省に連 絡して国家レベルの政策対話を推し進め、技術援助および能力構築の準備を整え、国家間 のピアツーピアのコラボレーションを育成し、また、たばこ税政策の設計をさらに改善し、 支援運動を先鋭化し、インパクトを強めるための学習議題を推し進めます。 多くの国は今、たばこ税制改革の岐路に立っています。それは、健康および発展のための 非常に重要な岐路です。幸いな事に、問題を巡るだけでなく、実績のある解決策を巡って、 各国およびパートナーは協力し合うことができます。健康の増進、貧困層の削減、そしてす べての国にとってのよりすばらしい開発機会に向けて、世界規模でたばこ税の議題を前進さ せていくためには、より強固な結束と、団結した取り組みが必要とされます。 15 たばこ税の改革 • 健康と開発の交差点 引用文献 Furman J. 2016. “Policy, Politics, and the Tripling of Federal Tobacco Taxes in the United States to Deter People from Smoking, Save Lives, and Mobilize Revenue over the last 30 years. 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